

よそに見し をざさが上の白露を たもとにかくる ふたむらの山
と詠んだ源頼朝の歌があります。
頼朝がその歌を詠んだ場所は、鎌倉街道の名勝地二村山です。
そこはちょうど、名古屋市緑区と豊明市の境にあります。
現代語ではこんな感じかと思います。
「遠くから眺めていた、小笹の葉の上の白露(しらつゆ)を、今は自分の袂(たもと)に受けている。この二村山で。」と。
もう少し補足すると、
遠くから眺めていた白露(叶わぬと諦めていた願い)を、
今では手にすることができるようになった。
二村山を越えて、いよいよ都に近づいてきた。
というような感慨深い気持ちが読み込まれています。
源頼朝は、1190年に朝廷から右近衛大将に任じられます。
源頼朝は、1190年に朝廷から右近衛大将に任じられています。
そのために都に登る途中の二村山でこの歌を詠んだのでした。
彼は、軍勢とともに京まで進む街道の景色のなかで、
二村山から見える尾張の景色にとても感動したしたと思います。
そんな頼朝公の心の中には、無念にも知多で騙し討ちされてなくなった
父、義朝公のこと。
熱田神宮が実家の母(由良御前)と、
頼朝の生まれ故郷でもある名古屋のことなどが、
二村山からの一望の景色とともに、頭の中を巡ったのだと思います。
そういった背景を考えると、頼朝公が詠んだ歌の意味がはっきりします。
遙か遠いところから眺めていた都のことが、これからは自分のことでもある。
ついに自分がその権力を手にすることになった。
そんな感慨が込められているように思います。